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House for Rudolf M Schindler and Clyde Chace,Kings Road House

Rudolf M Schindler 1921-22 West Hollywood

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ビバリーヒルズのショッピングエリアから程近いところに、 この家はひっそりとたたずんでいました。

大通りからは、それを知らせる小さなプレートがあるのみで、その姿は木々に覆われて見えません。

 

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きっちりと刈り込まれた生垣のアプローチは、京都の禅寺を思わせます。

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アプローチの生垣が少し途切れたところ、左手にメインの 玄関ポーチが現れます。

小さなかわいらしい玄関扉。

 

「あっ。いい。」 思わず、顔がほころびます。

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道路から続くアプローチを進むと、キッチンに続くサービスのための出入り口があります。

こちらの開口部は、開放的で、低い庇が水平に伸びています。

松江にある、小泉八雲邸の玄関を見た時にも感じた、キュンとする感覚。

 

この家は、シンドラーとその妻のための住宅として建てられた、コンクリートの壁と木の天井、ガラスの開口でできた平屋です。

大きく、2つのブロックから成り立ち、一つは南東に面した、リビング、ダイニングといったパブリックな空間(ブロック1)、

もう一つは、北西に面した、ベッドルームのプライベートな空間(ブロック2)。

それぞれが、コートとガーデンといった外部空間を囲むような構成になっています。

 

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ここでは、しっかりと2方をコンクリートの壁で包み込み、開口を中庭の方へ絞ることで、場に落ち着きと明確な方向性を作っているのがわかります。

リビングと中庭は布でできた襖のような、簡易な引き戸で繋がっており、内部と外部のあいまいさをつくりだしています。

低い位置に飛んでいる、合わせ梁と開口部の鴨居の水平ラインが、統一感と落ち着き、伸びやかさを感じさせます。

 

 

リビング空間の中庭(パティオ)

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内部の暖炉と背中あわせに暖炉があり、シンドラーが、外部の中庭を第2のリビングとして見立てていたことが伺えます。

コーナーのガラスで囲われたスペースには、陽光が溢れるコージーコーナーであったのでしょう。

 

 

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さらに奥へ行ったところのプライベートなブロックも、コンクリートの壁、庭に開いた引戸の開口部、低い鴨居、梁、暖炉といった

リビングスペースと同じ要素でできています。

 

 

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そして、2つめの中庭。

ここまで来て、おぼろげに感じていた事柄が、私の中ではっきりとしました。

この家は、シンドラーの見た日本なのだと。

庭の奥の、竹の生垣に囲まれた四角い庭。


これは京都の寺のお庭に他なりませんでした。

道路からのアプローチや、低く統一された内法(鴨居や梁)のライン、引き戸で調整できる内と外との関係、

内から眺める庭、簡素なつくり、全てシンドラーがかつて日本でみたものなのです。

その上で、コンクリートの壁、暖炉、陽だまりののコージーコナーによって、明確に場の限定を行い、

居場所づくりをしているのです。

 

全て建具で囲まれた日本の田の字型の部屋を見て、一体何処に座ればいいのか、どうやってプライベートを保てばよいのか、

首をかしげたシンドラーが目に浮かぶようです。